こちらは書籍「ストレングス・ファインダー2.0
- 「戦略性」課長
- 「個別化」課長の妻
- 「調和性」主任
- 「最上志向」部長
- 「未来志向」配属予定の私
タップできるもくじ
ストレングスファインダー「戦略性」課長
ポケットのスマホが鳴動した。
スマホを取り出して、電話の相手を確認する。
またコイツか。メールで済むことをいちいち電話で確認してくる奴だ。
しかも不在着信だけ残して、ショートメールも留守番電話も残さない。いわゆるタチの悪いタイプ。
電話は同期通信。すなわちお互いのタイミングが合わないとやり取りできないのだ。
同期通信のみを伝達のツールにしている時点でナンセンス。
スマホのバイブが止まってから「ただ今会議中です。メールにてよろしくお願いいたします」とショートメールを送った。
顔を上げて意識を目の前の会議に戻す。
ちょうど今、部下たちが来期からの新製品のオフテイク(販売促進)施策を話し合っている。
ダメだな。議論がまとまるどころか、あっちこっちに発散し始めている。
もう少し泳がせてもいいが、オフテイク施策がまとまらないと、部長への報告に遅延が生じてしまう。軌道修正しておこうか。
「ちょっといいかな?」
俺は手を上げた。
「今この会議で決めるべきことは何ですか?」
数秒の沈黙の後、主任(調和性)が声を出した。
「来期からどうやって新製品を売っていくのか、販売施策を決めることです」
「そのとおり。で、現状はどうなってる?」
「新聞広告と試飲会、サンプリング、啓発サイトの立ち上げ、バナー広告、リスティング広告、デジタルPOPなど、皆さんから良い意見が上がっています」
「なるほど。この製品のターゲット層、分かってる? 50代以上のシニア層だよね?」
「はい」
「デジタル中心のオンライン施策で、シニア層にリーチできる?」
「……ちょっと難しいかもしれません」
「だよね? それじゃあ、新聞広告とサンプリング、こちらを中心に施策を固めてくれるかな。それで皆どう?」
皆の顔をぐるりと見回した。特に誰も言葉を発しない。異論はないということだろう。
「よし、それじゃあ主任、そっち路線で皆の意見まとめといて。僕は次の会議あるから失礼するね」
「あ、皆さんひとつだけ。来週の呑み会、品川駅周辺でお店決めとくから、また連絡します」
そう言い残して会議室を後にした俺はスマホを取り出し、「来週木曜日、品川で歓迎会するからお店の候補ちょうだい。予算5千円でヨロシク」と妻にLINEでメッセージを送った。
これから部長とのフィードバック面談だ。気を引き締めていこう。
ストレングスファインダー「個別化」課長の妻
夫からいつものように情報の少なすぎるLINEが来た。
あの人はいつもそう。面倒くさがりだから最低限の情報しかくれない。
私は食べログのアプリを開いて、品川駅周辺のグルメ情報を表示した。
えーっと、あの人の部署は男性ばかりだから、イタリアンでガッツリ行くのがいいかしら。
あ、ちょっと待って。木曜日って書いていたわね。
イタリアンはニンニクの効いた料理が結構多いから、次の日お客さんに接するような方がいらっしゃったら、ちょっと差し障りがあるよね。うん、営業の人がいるから、ちょっと難しいかな。
それじゃあ、中華料理にしようかしら。
乾杯とか締めの挨拶をするだろうから、個室の方がいいわよね。
……うーん、なかなか品川周辺で個室の中華料理屋さんってないものね。
あら! いやだ、私ってば。
そういえばあの人、新しく女の子が来るから、歓迎会やるって言ってたじゃない。
だとすると、量が多めの中華も厳しいわね。
よし、やっぱりここはどちらにも行ける、無難な和食にしましょう。
それから個室のある和食料理屋さんをいくつかピックアップして、夫にお店のURLを送った。
夫が幹事やるなんて珍しいわね。
いつもはあの優しそうな主任さんがやってくださるのに。
ストレングスファインダー「調和性」主任
課長が会議室を出ていってから、皆から一斉に深いため息がもれた。
あの人は自分一人で会議をまとめた気になって、ひととおり言いたいことだけ言って出ていく。いつもそうだ。
引っかき回した会議室を落ち着かせるのは、常に僕の役目。
「えーっと……、課長はああ言ってたけど、僕は皆の意見すごく面白かったと思うよ」
「ほら、だって今は、結構スマホとかタブレットをイジるおじいちゃんおばあちゃんも増えてるから、あながちデジタルがダメだって訳でもないと思うんだよね」
皆をフォローしようとすると、ついつい言葉が多くなってしまう。
そうだ、デジタルの施策をたくさん出してくれた通販担当も励まさなくちゃ。
「君の言ってた商品情報のQRコードをPOPに載せるとか、LINE@に登録してもらう案も、これからの時代は絶対必要になってくるから、タイミングを見て課長に進言しておくよ」
よし、ここはチームがバラバラにならないようにまとめないと。
「来週は課長幹事の歓迎会だけど、それとは別にここのメンバーだけで、今度ゴハンでも食べに行こうよ。近くにすごく美味しい燻製料理屋さん見つけたから」
「燻製料理とかいいですね! 課長の迷言を酒の肴に、皆で盛り上がりましょう」
営業担当(適応性)も賛同してくれた。それとともに皆の顔にも笑顔が戻ってきた。
ああ、良かった。これでひとまず安心かな。
さらに営業担当が援護してくれた。
「それじゃあ主任。とりあえず課長が言ってたとおり、新聞広告やサンプリングとか、オフライン施策を中心に出していきましょうか」
「うん、そうだね。皆も大変だろうけど、皆のおかげで新製品の認知度がすごく上がっているんだよ。こないだ部長(最上志向)も褒めてくれていたし。もう少しの辛抱だから頑張っていこう」
ストレングスファインダー「最上志向」部長
「うーん、悪くはないんだけどね」
思わずそんな言葉が自分の口から漏れ出た。
目の前には課長が座っている。今は人事考課のフィードバック面談だ。
「この書き方じゃあ、自分の実績が伝わりにくいでしょ。君は今まで全く取り引きのなかったお客さんから、受注を勝ち取ったんだから、取り引きゼロだったというところをもっと強調しないと」
「なるほど。さすが部長、すごく参考になります」
「あとあれだ! 君はネット関係にも精通していて、Eコマースのプロモーションもやってるんだから、それも書いておかないと。会社は今そこに力を入れてるから、良いアピールになるよ」
「それも入れておいたほうがいいですね」
「いま一度、君には伝えておくけど、この人事考課というのは、自分自身を最大限アピールする場なんだよ。自分自身のストロングポイントを1ミリも余すことなく伝えるようにしないと、意味のない人事考課になっちゃうよ」
「確かに。もったいないですものね」
「そのとおりだ、もったいない。あ、そうだ! この人事考課は全体的に、自分の実績を中心に書かれているから、部下にこういう指導やアドバイスを心がけているとか、コーチングの視点も盛り込まないと。君は実際、推進力のあるリーダーなんだから」
「ありがとうございます」
「今言った点を反映して、明後日にもう1回持ってきてくれるかな?」
「はい、承知いたしました」
そう言ってから出ていく課長の背中を見て、私は思った。
自分の強みというのは、なかなか自分自身では分からないものなのだろうか。
私ならば、自分の魅力をちょっとでも伝えきれていなかったら気になるし、できるだけ自分の能力を高く表現するために、適切な表現に変える努力を怠らないのだがね。
そういえば。
社内公募で異動してくる彼女は来週配属か。なかなか面白そうな女性だったな。未経験の分野にも関わらず、やけに具体的なイメージを持っていたし、即戦力になってくれそうだ。
ストレングスファインダー「未来志向」配属予定の私
来週からいよいよ新しい部署に配属。
いま私の心にあるのは「楽しみ」という感情だけ。
今までは「既存のビジネスをどのように大きくしていくか」というものだったけど、これから行く部署は全く新しい製品を1から立ち上げて、新規市場に参入していくもの。
私自身も全くの新製品は経験したことがないから、もちろん分からない部分はある。でもそれはそれで経験値として自分のスキルになっていくものだから、そこもふくめて楽しみ。
うちの会社が今まで出したことない製品だから売り上げも読めないし、ブランドを存続していくために、今のメンバーはかなりのプレッシャーにさらされているはず。
私は面接で出会った面々を思い浮かべた。
あの課長さんが強引に旗を振って、主任さんがチームのバランスを保っている感じかな。部長さんはチームを自分のコントロール下に置いて、良い方向へと矯正したいタイプかな。
課長さんにはとりあえずロジカルに回答すれば問題なさそうだし、主任さんは平和主義だろうから普通に接しておけば大丈夫。
あ、そうだ。そろそろ赴任手当を申請して、新しい定期券も買っておかなきゃ。
あとは新居に引っ越すからライフラインの移行手続きと、市役所に行って転出届も出さないと。
あっちに行ってバタバタしたくないから、あらかじめやるべきことは全て済ましておこう。
ストレングスファインダー2.0な会社員まとめ
本記事は「ストレングスファインダー2.0な会社員たちのとある1日」について書きました。
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どうも、マクリン( @Maku_ring)でした。